【 百花繚乱 】








 深い森が、とつぜん開けた。



 色とりどりの花畑。
 光射すその空間の中心には二本の年老いた桜の木。
 大きく張り出した高く空に伸ばした枝という枝そのすべてに満開の花を抱いて。




 今が盛りと咲き誇る花たちは、
          けれど惜しげもなくその花弁を風に散らす。


    ひらり

                       ひら
           ひらり
                              ひらりと


 燃え立つような桜色の、光射す森に兄さんが、足を進める。
 雪のようにひらひらと舞う花びらのなか、桜色の森の中心あたりで立ち止まる僕を振り返る。




                           ひらり
        ひらり
                    ひら
   ひらり



     あやかしのように、兄さんが笑って髪を解く。

 着衣を落とす。
                    一糸纏わぬ姿を晒す。




 ひらり、と。
 花びらが、兄さんの素肌を飾る。
 ひらひらと降ってつややかな鋼鉄の肌を彩る。




                           ひらり

        ひらり、と



 桜色の天井を透かして光が射す柔らかな色彩が兄さんの肌を照らす。

      桜を透かす光を浴びて・・・・・・兄さんがうっとりと微笑む。

                   金の髪を風が揺らす。
    長い髪が花びらが一陣の風に舞い上がる。



          ふわりと


                     ざわりと


  ざわり、と       僕の魂が  波打って・・・・・・・・・。






 咲き誇る咲き乱れる空を埋める一面の桜色。
 足元を埋め尽くす色とりどりの野の花々。


                                                     ひらり
   ひら                   ひら


                   ひら
                               ひらり
          ひらり

                          ひらり
     ひらりと



   つむじ風が花を散らす惜しみなく散らし咲き乱れる。

       雪のような桜色の花びら纏って妖のように兄さんが微笑む。



 咲き乱れる咲き誇る色とりどりの花々空を埋める花々。

    その中でも一番綺麗でみだらな花が僕に向かって手を差し伸べる。


                       ひらり


「来いよ、アル・・・・・・・・・ここで・・・・・・」


   ひらり

                   ひら

         ひらと
                            ひらり

                      ひらりと



「・・・・・・ここで・・・・・・・・・俺を」


 桜色のじゅうたんの上に兄さんは腰を降ろして。

           とろりと濡れた眼差しで僕をみつめて。
    ‘抱いてくれよ’とゆっくり、両脚を開く・・・・・・。

   僕を誘惑する 自分の手でそれを花の雌蕊みたいにそそり立たせる。


                    ひらり

   ひらり
                           ひら

         ひらり


 ガシャガシャとこの場に不似合いな音を立てて僕は・・・・・・。


             花に誘われる蜜蜂みたいに・・・・・・・・・・。


      咲き乱れる咲き誇る色とりどりの花々空を埋める花々。

 兄さんに触れる一番綺麗で淫らな花におぼれる。



    紅色の雌蕊は受粉を待つように先端をとろとろと濡らして・・・・・・。




 咲き誇る咲き乱れる空を埋める一面の桜色。
 足元を埋め尽くす色とりどりの野の花々。



                                                     ひらり
   ひら                    ひら


                  ひら
                               ひらり
          ひらり

                           ひらり
      ひらりと



 咲き誇る咲き乱れる雪のように花びらが降り注ぐ。
 僕らの世界が極彩色に彩られる。



 きれいな花淫らな花足元を埋める花天井を飾るさくらいろ。




 百花繚乱、狂い咲く・・・・・・・・・。







END