『 求愛行動 』
にゃあ〜〜〜〜んっっ
やたらと大きな声で鳴いて、1匹の猫がアルの脚に擦り寄った。
開け放して心地よい風を取り込んでいた窓からするりと入ってきた白い猫が、媚びるようにくねくねと、その柔らかな身体をアルの脚にまとわり付かせた。
「・・・・・・すげーでけぇ声。なんなんだ、一体?」
「あぁ、発情期なんでしょ?ここ何日か、けっこうあちこちでニャウニャウ鳴いてるよ」
ベッドに腰を下ろしたアルの隣にピョンと飛び乗りころりと転がる。
そのふわふわとした腹をアルの大きな掌が撫でると、猫はうっとりと目を細めてもだえるように身をよじらせた。
にゃぁんあぁぁぁん
まるでよがり声のようなそれに、聞いているオレのほうが恥ずかしい。
なのに当のアルはまるで気にするふうでもなく、楽しそうにクタクタの猫を撫で繰り回している。
そして猫はまた唐突に転がり、尻をアルに向けるようにして長い尾をピンと高く震わせる。
アルの指が、猫の背中、尾の付け根ちかくをくすぐる。猫はニャニャニャと鳴いて腰を掲げる。尻の穴から何からもうすっかり丸見えで。
ななななな・・・・・なんて破廉恥なっっ!!!
もうどうしてオレばっかり恥ずかしくていたたまれなくてムズムズして頭から毛布をすっぽりかぶる。だけど気になって隙間から様子を窺い見る。
ぅるにゃぁぁぁぁん
いつの間にか、声を聞きつけたのか窓から大きなオス猫が顔を覗かせる。
するりと、まるで何事も無かったかのような変わり身の早さで、白い猫が窓枠に飛び移る。
猫たちは互いの鼻先を寄せ、匂いをかぎ合う仕草をすると仲良く連れ立って行ってしまった。
「あはは、やっぱ猫のオスのほうが良いってさ」
笑いながら、アルがオレを振り返る。
ムズムズする。うずうずする。
「なぁに毛布なんかかぶってるのさ、兄さん?」
「にゃぁん・・・・・・・・・」
だけどオレから誘うなんて恥ずかしくってこれが精一杯。
伝わるかな・・・・・・これで伝わるかな・・・・・・・・・。
アルが、くすくすと笑う。その鎧の大きな手をオレに差し出して。
「おいで・・・・・・もっと可愛く鳴いてごらん」
オレはもそもそと毛布から抜け出して、そのなめし皮の掌に、猫のマネで火照った頬を擦り付けた。
END