『 あなたの疲れを癒す方法 』
「・・・・・・・・・・・・・そこ・・・・・・気持ちイイ」
「ここ?」
「ん・・・・・・・っそう・・・・・・そこ、もっと・・・・・・・・・・・・・」
新年早々大立ち回りを演じた兄さんは、風呂上りのバスローブ姿でそのままベッドで行き倒れの人になりかけていた。
そんな無防備な格好で無防備に力尽きてる兄さん、放って置けるわけ、ないだろう?
「兄さん、筋肉に疲れを溜めたまま寝るのはよくないよ」
疲れることのない鎧の身体の僕と違って、兄さんは生身の人間なんだから肉体的・精神的ストレスはきちんと解消してあげないと体調を崩してしまうと声をかけた僕に、帰ってきたのは生返事。
「仕方ないなー。いいよ、僕がマッサージしてあげる」
「おぅ、サンキュ・・・・・・・・・」
今にもスコッと寝てしまいそうなぽやぽやした顔で笑う兄さんに軽く溜息をついて、左手の指先から丁寧にマッサージを始める。
僕には感覚がないから、兄さんの表情を見て力加減を計るしかない。
うっかり握りつぶしてしまうことのないように、辛そうな顔をしていないか気をつけながら、指を1本1本丁寧に揉んでゆく。
指の付け根、手のひら、手の甲。
兄さんは猫のように目を細めて僕の手元を見ている。
手首から下腕部。
肘に向かって扱くように撫で上げると、表皮にぽつぽつ浮かぶ赤。疲弊した筋肉に残るむくみ、滞ったリンパ液。
丹念に揉み解すと、兄さんがかすかに眉を寄せる。
「あ、大丈夫、兄さん?痛かった?」
「ん・・・・・・痛いけど、へーき」
‘いたきもちいい’と、ぽしょぽしょ呟いて満足そうに目を閉じる。
気持ちがいいなら、かまわない。
二人で元に戻るために、どんな過酷な条件下に置かれても、文句ひとつ言わない。
皮膚感覚を失った僕に気を遣って。
暑くても暑いと言わない。寒くても寒いと言わない。カチカチ鳴りかけた歯をぐっとかみ締めるその唇が白く血の気をなくしていても。
だから、僕がちゃんと見ておかないと。
我慢しすぎていつか倒れてしまうんじゃないかと思うから。
そんなことにならないように、僕がちゃんと気をつけていてあげないと。
僕のたった一人の、大切な大切な兄さんだから。
自分は‘軍の狗’と呼ばれ罵られても、僕が他人に悪く言われないようにと、その小さな身体で守ってくれようとする。
だから、僕も守ってあげたいんだ。
あなたを傷付けようとするものすべてから。
この痛みを感じない鉄の身体を盾にして、守ってあげたいと思うんだ。
大切な、兄さん。
優しくて綺麗で強くて・・・・・・・・・・時にハッとするほど儚くて可愛い・・・・・・・おっと、本音が。
上腕部から、肩にかけて。
常に頭も身体も使っている兄さんだから、よほど肩がこっているのだろう。
んーー、と、小さく唸るような声をあげて、枕に額を押しつける。力を弱めようかと言った僕に首を振る。
「だいじょぶ・・・・・・すげぇ、きもちぃ・・・・・・」
息を詰めたような、切なげな声。ありもしない心臓がバクバクいっている。
「そ、そそそ、そう?ここ?」
「ん、そこ・・・・・・・・・ぅんっ」
や・・・・・・・・・・・・・・・・役得っ!!
兄さんのこんなエッチぃ声が聞けるだなんて!!
俄然ヤル気は300倍で、僕は丁寧に兄さんの身体を揉み解す。
肩、背中から腰にかけて、うつ伏せになった兄さんの身体に手を這わす。
「アルの手、気持ちイイ、な・・・・・・」
どこかうっとりしたような掠れ声、なんの警戒心も見せず力の抜けた身体、頬にかかる金の髪、笑みの形をつくる唇。
もう!いくらでも揉んであげるよ兄さんっっ!!!
いくらでも気持ちよくしてあげるよ兄さん!!!!
全身全霊をかけてもっっっ!!!!!!
「足っ!足も疲れてるよね、兄さん!!」
「ん、つかれてる・・・・・・」
「きっちり解してあげるよ、兄さん!」
「さんきゅ、な」
その可愛らしい足の指の一本一本まで丹念に揉んであげるよ、つ−か揉ませてくれ兄さんっ!!!
うつぶせの兄さんの右足を立てて、湯上りで色づいた足先からマッサージを再開する。
桜貝のような爪、形のいい踝。あぁもう、頬ずりしたいっっ!!
心の中で拳を握って衝動を堪えて、何気ない素振りで兄さんのふくらはぎをやわやわと揉みまくる。
この先は、太ももだ・・・・・・・・・。
無表情な鎧の面に僕は今、心から感謝する!!
ビバ、鎧っっ!!!
ゆっくりとさり気なく少しだけ脚を開かせて、両側から兄さんの太ももに手を伸ばす。
ふともも・・・・・・・・・。
兄さんの、ふともも・・・・・・・・・。
僕の全神経は、目の前の太ももに集中している。
「・・・・・・んっ・・・・・・・・・・・」
ゆるく開かれていた腿が、突然きゅっと閉じて僕の手が挟まれる。息を詰めたような、兄さんの声と同時に。
「い、痛かった?兄さん?」
「だいじょ・・・・・・・ぶ、ちょっと・・・・・こしょばゆかった、だけ・・・・・・・・・」
そっ・・・・・・それって!感じちゃったのか兄さん!?
「ややややめとく?」
「へいきだから・・・・・・・・・やめん、な・・・・・・」
兄さんがそれを望むなら僕はっっっっ!!!!
「じゃ、じゃあ、続けるからねっ?」
「ん・・・・・・」
許しを得て、僕はまた兄さんの太ももを揉み始める。撫でるように掌を滑らせると、兄さんの指がシーツを掴んだ。
もだえるような兄さんの姿。
まさに眼福だ!!
ああ、僕は兄さんの弟でよかったと、心の底から思っているよ!!
他の男じゃきっとこんな無防備な姿なんて見せてくれない。あぁっ兄さんっっ!!
「は、反対側も揉まないとねっ!」
左足、機会鎧の接合部分、皮膚の薄い大きな傷跡に指先が触れたとたん・・・・・・・・・。
「ひゃ・・・・・・・・んっ」
甘い声をあげて、兄さんが仰け反る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・ここか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・この傷跡のところが、兄さんのイイところなのか?
試しに、僕は指先で、そこをもう一度なぞってみる。
「ぁ・・・あ・・・・・・・・・るっ」
切なげに、腰をシーツに押し付ける。
間違いない・・・・・・・・・っっ!!
「凝って、るんだ・・・・・・・・凝ってるんだよ兄さんっっ!!」
我を忘れて雄叫びを上げて、僕はもう夢中で兄さんの太ももを揉む。膝から小さなお尻に向けて!
「あ、アル・・・・・・ぁあっ」
跳ね上がった腰、チラリとまくれたバスローブの下でほんのり色づくおいしそうな桃・・・・・・・・桃?
・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃないっっ!!!!
尻か!?尻なのか!?
パンツ履いてないのか兄さんっ!?
今・・・・・・・・・僕の心の中で、海綿体にドクドクと血が集まった。
ギンギンにいきり立って臍につきそうだぜベイベーーーーーーっっ!!
「凝ってるよ兄さん!!解さないと!!!」
バスローブを勢い良くまくりあげ、現れた生尻を掌に包んで揉みしだく。
「アル・・・・・・っ、アルぅっ」
あぁん、と、可愛い声で啼いて尻が浮く。
「凝ってるんだ!凝ってるんだよ!!大変だ早く解さないと!!」
もみながら割り開いたそこに息づくヒミツノハナゾノ。
兄さんの可愛らしく慎ましやかな薔薇の蕾ぃっ!!
今っったった今っっっ!!
僕は生身の身体が欲しいっっっっっっ!!!!
鎧万歳と叫んだ舌の根も乾かぬうちに、いやでも鎧には舌がないから全然オッケーーーっっ!!
それよりいっそ、根性だけで扉くぐって戻って来い僕の肉体!!
って、そんな都合よくいくわけもなく。
ただただ僕は兄さんの尻を揉み続ける。
「あぁん、アル・・・っ」
すっかりもう、兄さんは僕にお尻を見せ付けるかのように掲げて腰をくねらせる。
腿のあいだで揺れる、ばら色に染まった兄さんのオトコノコはふるふると震えながら透明な蜜を零している。
誘われるように、僕はそれに手を伸ばす。
「大変だ、兄さん・・・・・・・・・」
「ぇ・・・・・・・な、に・・・?」
「膿が、溜まってる」
「ア・・・・・・ル・・・?え、だっ・・・て・・・・・・・・・・これ・・・・・・?」
「かわいそうに、疲れてるんだね兄さん。でも大丈夫、僕がちゃんと出してあげるから」
浅い息をして、なにがなんだか分からなくなっているような兄さんを抱え起こして背中から抱き込んで。
僕はゆるゆると兄さんのソコを扱き始める。
「あ・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・っ、あるぅ・・・・・・っ」
「大丈夫兄さん、怖くないからっ!僕がちゃんとやってあげるから!」
「アル・・・アル・・・・・・・・・っ」
「痛くない?兄さんっ?」
「・・・・・・・・たくな、い・・・・・・・・・・・・・きもち・・・・・・い」
目にいっぱい涙をためて僕を見上げて泣きそうな声でそう答えて。
気持ちいい?気持ち良いんだね兄さん!?
あぁっ、今、生身の身体があれば兄さんあなたを僕のビッグ・マグナム(希望的推測)で目くるめく絶頂を味わわせてあげられるのに!!
でも、大丈夫!この鎧の体でも、ちゃんと気持ちよくしてあげるからね!!
「アル・・・・・・あ、る・・・ぅ・・・・・・・・・い、いい・・・・・・っ」
僕の顔を見ながら、兄さんが呟く。
鮮やかに染まった肌を汗が真珠のようにはじけて転がってゆく。
切なげに切なげに、何度も僕の名前を呼んで・・・・・・・・・。
兄さんが、絶頂を迎えた・・・・・・・・・・・・・僕の手で、僕の、腕の中で。
「やば・・・・・・・・・い」
溜め込んでいたものを出しきって、そのままコテッと眠ってしまった兄さんを見ながら、僕は非常に慌てていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・調子に、乗りすぎたかもしれない。
理性ぶっとばして我を忘れていたとはいえ、いくらなんでもやりすぎてしまったかもしれない。
明日朝起きたら、ものすごく怒るんじゃないだろうか・・・・・・・・・。
口もきいてくれないんじゃないだろうか・・・・・・・・・。
自分のしたことを考えれば、そのくらい仕方がない。仕方がない、けど、そんなのは嫌だ。
だいたい、嫌われたくないから今までひっそりと心の中で兄さんを愛でていたんじゃないか。
ああ、僕はなんて馬鹿なんだ『後悔』っていう字は後で悔やむと書くんだ畜生。
思考は螺旋を描くようにぐるぐるとふかい所へと転がり落ちてゆく。
眠りのない夜はあまりに長くて、どこまでも転がり落ちてゆく。
カーテンの隙間から入り込んだ明るい陽射しが、金の睫毛にキラキラとした光を落とす。
眩しそうに眉根を寄せて一瞬小さく身体を丸め、子猫みたいな伸びをする。
ゆっくりと視線を泳がせて、僕を見つける。
ベッドの脇で膝を抱えて悩み明かした僕を見つけて、晴れやかに、笑う。
許されたのだと、泣きそうになった。泣けないけど、泣きたくなった。
「ごめん・・・・・・・・・ごめんなさい兄さん・・・・・・・・・・・・・」
バカみたいに繰り返し謝る僕に兄さんは小さく口の端で笑って。
「おい、アル・・・・・・・・・シャワー浴びたい。抱っこして連れてけ」
「うんっっ、うん、兄さんっ」
お姫様抱っこでバスルームに向かう僕の腕の中で兄さんがくすくすと笑う。
「朝飯は、向かいのパン屋のチキンサンドがいいな。あ、あと、絞りたてのオレンジジュース」
「うん、分かった。用意しておくからっ!」
おろおろと、何しろとにかく兄さんの機嫌をとろうと焦る僕を目の端で見て、兄さんがバスルームの扉を開ける。
「おい、馬鹿アル」
「な、何っ!?」
「お前、今日から俺のコイビトな。ちゃ〜〜んと、責任とって貰うからな?」
ふふん、と笑って、バスルームに姿が消える。
安堵して、僕はその場にへたり込む。
取るよ、責任。いくらでも取るから。
コイビトでいいなら、もう、いくらでも責任取るから。
あぁ、早くパン屋へ買い物に行こう。オレンジも買わないと。
可愛くて綺麗なコイビトの機嫌をしっかり取るために。
END
・・・・・・・・・そして彼は、これらがみんな兄の策略だったことは知らない(笑)