『 其処は怒涛の楽園 』(3)
「アル・・・・・・・・・!!」
後を追おうとしたエドワードさんの体が大きく傾ぐ。
見れば、義足の足首が折れて、頼りなくぶら下がっている。
エドワードさんがそれに悔しそうに舌打ちをして。
早く、追いたいのだろうに。
いつもとっておきの話をするみたいに聞かせてくれた、いつもいつも会いたがっていた、弟を。
「こんな腕と足で、戦いに行くつもり?」
と、女の人が静かに笑った。あきれたような包み込むような穏やかな顔であんたは相変わらず落ち着かないのねと。
そして、抱えていた大きな鞄を開ける。中身を取り出す。
大切そうに取り出されたそれ。艶やかな、鋼の、義肢。
細部まで磨き上げられ滑らかな曲線を描くフォルム。
その造型を見ただけでも、どれだけの技術とどれほどの思い入れでもって作り上げられた‘作品’であるのかが伝わってくる。
美しく重厚な機械。
すべてを諦めたように儚げな数日前までのエドワードさんには重荷になりそうな、その存在感。
俺だって成長しているんだぜと口を尖らせるエドワードさんに、私を誰だと思っているのと、ウィンリィと呼ばれたその女の人が笑う。
手際良い、慣れた手つきで接合部分の汚れを落とし、エドワードさんの肩に脚にその美しい機械を取り付ける。
繋ぎ合わせる瞬間。エドワードさんが僅かに顔をしかめる。電流が走ったみたいに肌があわ立ち髪が逆立つ。
動作を確認する。
繊細で力強い動き。
まるで彼自身の手足のような、自然な動き。指先にまで神経が行き届いているかのような。
エドワードさんの瞳に焔が灯る。
彼の気配が鋭く引き締まる。
起動音すら聴こえてきそうな錯覚。
目覚める。‘彼’が目を覚ます。
そう・・・・・・まるで、ロケットのエンジンに火を入れたみたいに。
ぞくぞくした。
でも、同時に切なくなった。
僕は・・・・・・・・・・・エドワードさんに翼をあげたかった。
片手片足に義肢を付けて時折もどかしそうにしている彼に、自由な翼をあげたかった。
でも、ここには、自由に動く手足を彼に与えることの出来る人が、居る。
「アルフォンス」
切なくなっていたら、エドワードさんに名前を呼ばれた。
「片を付けて、戻るから待ってろ。ウィンリィ!こいつを頼む。・・・・・・・・・病気なんだ。変な咳をするし、血を吐いた」
ウィンリィさんはまるで頭の中を検索するみたいに僕を見て。
「わかった。つれて帰るから、この子は私に任せてあんたは安心して行ってらっしゃい。アルと一緒に・・・・・・・・・今度はちゃんと帰って来るのよ」
「了解」
ニッと笑って、駆け出す軽やかに。
まるで羽根が生えたかのように軽やかに。
その背中が見えなくなって。
「さて」
ウィンリィさんが、眼鏡を掛けた制服姿の女の人と僕を順番に見て。
「私たちもここを出ましょう?シェスカ、ちょっとこの鞄頼むわ」
「えぇーっ!でもこれすごく重そうですよ!!」
「大丈夫よ、機械鎧は出したもの・・・・・・・・・っと、これ・・・・・・・」
ついさっきまでエドワードさんの手足だったそれらを手に取り、彼女はまじまじと眺める。
人工皮膚がめくれたある一点を見て、優しい微笑を浮かべた。
「これも、持って帰る」
「まだ荷物増やすんですか!?」
シェスカと呼ばれた女の人が悲鳴を上げる。
「そう。持って帰るの」
これを捨てるなんて出来ないから、と、ウィンリィさんが笑った。
よっ!
・・・・・・・・・などとやたら威勢のいい掛け声とともに、ウィンリィさんが僕を片手でひょいと担ぎ上げる。
「あ・・・・・・・・・・・あのっっ!!」
僕は酷くうろたえる。
「あぁ、そうか。胸が悪いんだったらこの体勢はキツイわよねぇ。ごめんごめん」
笑いながら僕を降ろして、今度は横抱きに抱える・・・・・・・・・俗に言う‘お姫様抱っこ’というやつだ。
あのっ、そのっっ!!
どう考えても僕のほうが身長があるしそれに体重だって・・・・・・・っっ!!
なのになんでそんな軽がる抱えちゃうんですか重くないんですか!?
この世界の腕力の基準って一体どんなんなんですかっっ!?
エドワードさんが行ってしまって取り残されて未知のパワーに圧倒されて心細くなって泣きそうな僕を・・・・・・・・・大きな鞄を任されたシェスカさんが、気の毒そうな目で、見ていた。
緊張の糸が切れたのか無理をさせ続けた身体が差し出された休息に飛びついたのか、与えられた病室の清潔なベッドの上で、僕は何日も何日も眠り続けた。
窓から入る心地よい風にそよ吹かれながら何日も何日も眠り続けた。
意識だけは時折とろとろと覚醒して、まるで金縛りのように動かせない手足に怖くなって、泣きそうになった。
でも・・・・・・そんな時はいつでも、優しい手が僕の髪を額を撫でる。
ひんやりと滑らかな鋼の掌だったり少しまめの出来た細い指先であったり生命力みなぎる子供の手だったり、慈しみ深い、皺の浮いた小さな掌だったり。
子供のころから身体が弱くて熱ばかり出していた僕の、額を頬を撫でてくれた母さんのような手が「大丈夫だよ」と僕に触れて・・・・・・・・・僕はまた眠りに吸い込まれてゆく。
ずっとね・・・・・・ずっと、眠るのが怖かったんだ。
胸が痛くて、咳をすると血が出るようになって、深く息をしようとしても喘ぐばかりで上手く呼吸できなくってくらくらして。
怖かったんだ深く眠ったらそのまま目が覚めないんじゃないかって、怖かったんだ。
このまま何も出来ないまま僕が確かに存在したっていう証拠もなく誰の心にも残らないまま、消えていってしまうのが怖くて怖くて堪らなかったんだ。
誰の心からも・・・・・・エドワードさんの心からも消えてしまうんじゃないかって、怖くて。
怖いよ・・・・・・・・。
怖いよ・・・・・・やっぱり、死んでしまうのは怖いよ・・・・・・・・・。
「大丈夫だよ。お前さんの身体はちゃんと治ろうとしている、全力で病気と戦ってるのさ。まじめに医者に掛かっていなかったんだろう?馬鹿な子だね」
だって時間がないと思ったんだ。
何かを残さなければと思ったんだ。
それに・・・・・・医者に掛かって、残された時間を突きつけられるのが怖かったんだ。
怖かったんだこわかったんだ。とてもとても・・・・・・・・・怖くて。一人で死んでゆくのが本当はとても怖くて。
優しくて、力強い手が僕の手を握った。
窓から入る風が僕の頬を撫でた。
「大丈夫だよ、アルフォンス。ばっちゃんがそう言うんだから大丈夫なんだ。ばっちゃんもウィンリィもこう見えて実はスゲェ腕の立つ医者なんだぜ。だから大丈夫。付いててやっから安心して寝てろよ」
「こう見えてってのが一言余計なのよあんたは」
「いでっ・・・・・・だからお前、スパナで殴るのやめろよ」
「殴ったら馬鹿が治るかもしれないじゃない」
それが医者の言うことかよ、と、エドワードさんの愚痴る声。
おかしくて笑いたかった。なのに眠くて眠くてまたぼんやりと意識が薄れ始める。
「アルは?」
「中尉が持ってきてくれたシンの国の本を読んでる」
話し声が少しずつぼやけてゆく。
傍らに、優しい人たちの気配を感じながら、僕はまた眠りに付いた。
「おい、アル。ここで良いのか?」
「うん、そこに寝かせて。そこが一番植物の発育が良いでしょう?」
穏やかな陽が昇る朝、エドワードさんの弟のアルフォンス・エルリック君の先導のもと、僕は外に運び出された。
「龍脈・・・・・・大地の気の流れがそこで活発に放出されているんだ」
そう言って、彼が瞳を閉じる。まるで瞑想するみたいに。
「大地の持つ力の流れ。水の持つ力の流れ。風も光も。すべてに力の流れがあって、僕たち・・・・・・人間も動物も虫もみんな、生きるものすべて、その力の流れの中でその力のひとつとして生きている」
「一は全、全は一・・・・・・・・・か」
「そう。僕らの使う錬金術も東の国の練丹術も本質は同じ。・・・・・・・で、身体の中の‘気’つまり力の流れが乱れると、あちこちに不調が生じる。それが続くと病気になる・・・・・・それが主に医術として使われる錬丹術の考え方」
だから病気を治すためには乱れた流れを正しく戻してやればいい。龍脈と同調させて正しい路を作ってやればいい。
「念を押すようだけど、アル・・・・・・それは本当に人体練成じゃないんだろうな?」
険しい顔で、大切な弟を睨み付けるような顔でエドワードさんが聞いて。
「心配性だね、兄さんは。健康な人なら。ここに寝転がっているだけでも自然の持つ気を取り込むことが出来る。でも、彼の場合はすでに病気なぶん龍脈と同調する力が弱い。だから増幅すればいいんだ、取り込みやすくするために」
そう言って笑って、両の掌を合わせる。
光が生まれる。暖かくて、まばゆい。
その手が、僕の胸と地面に触れる。
僕は光に包まれる。
窓の外から威勢のいい掛け声が聞こえる。
エドワードさんたちが組み手をしている声。
かちゃかちゃと懐かしい機械音。
発注を受けた機会鎧を製作するウィンリィさんの傍ら、僕は窓辺で彼女の工具を磨いている。
自分に出来ることがあるのはどんな小さなことでも嬉しい。
第一、これは僕にも馴染みの仕事だし。
澄んだ空気を僕は胸いっぱいに吸い込んだ。
あの日からも日々は穏やかに過ぎて、僕はゆるやかに回復した。
「なぁにニコニコしてるの?」
その鋼の指先に関節に、神経の代わりとなる細いケーブルを1本1本丁寧に半田付けしながら、ウィンリィさんが笑う。
「だって、空気がおいしいんです・・・・・・こんなふうに感じられるなんて、思ってもみなかったから」
嬉しくて、本当に嬉しくて。僕も笑って返事をして。
「そうね、だいぶ起きていられる時間も長くなったし咳が出ても、もう全然、血が混じらなくなったしね」
食事も普通にとることが出来るようになったし。
リハビリ代わりに、こんなふうにちょっとした手伝いを。
「それに、工具の手入れするのが懐かしい」
「そっか・・・・・・星へ渡る船を作ってたんだっけ」
いったいエドワードさんはどんな説明をしたのだか。
「そんなロマンティックなものじゃないです・・・・・・・・・戦争の道具に使われてしまったから」
人を殺すための道具になってしまったから・・・・・・・・・。
「人に自由な手足を与えられる・・・・・・・人を生かすための機械を作れるウィンリィさんが羨ましいです」
肩をすくめてウィンリィさんが僕を振り返って。
「うーん。でもね、これを必要とする人の大半は・・・・・・戦争で手足を失った人たちなわけだし、こんな東部の田舎だと普通の義肢でなく機械鎧を求める人はやっぱり軍人が多いわ」
どんな機械だって、軍事に使おうとする人はたくさん居るのよ。どこにだって・・・・・・・と。
だから商売相手は出来るだけ見極めないとね?と、いたずらっぽく笑って。
かちゃかちゃと、金属同士のぶつかる軽い音。
「ねぇ、例えば・・・・・・・・・星へ渡るのはもっと先のことだとしても」
まるで歌うような声。僕は耳をそばだてる。
「空を飛べるなら遠くの町にも・・・・・・・・・高い山や大きな湖を迂回せずに行けるんじゃない?」
飛行機や、非空挺のことだろうか?
「深い森の向こうの医者も居ない小さな町で病人が出たとして・・・・・・・森を越えて飛んでいけるなら、ちゃんとした医療を受けることが出来るし、遠くの村で災害が起きても、陸路よりも早く救援に駆けつけることが出来るんじゃない?」
「そう・・・・・・・ですね・・・・・・・・・・・・・」
そうしたら・・・・・・・・・。
「そうしたら、それは人を助けるための機械じゃない?」
それとも、星へ行く船からは応用の出来ないものなのかな?と僕の顔を伺い見て。
「おう、それ良いんじゃね?複葉機みたいなの。お前なら作れるだろ、アルフォンス」
「空飛ぶ乗り物?へぇ、楽しそうじゃない。僕も混ぜてよ」
いつの間に組み手を追えたのか、汗をぬぐいながらエドワードさんと彼の弟が工房に入ってき会話に混じる。
「この国の空を飛ぶ乗り物ってさ・・・・・・・・・アレ、じゃない?」
「あぁ・・・・・・・・アレ、か」
「確かに空気は暖めると軽くなるから、囲い込んだその部分だけ温めてやれば浮き上がるのは・・・・・・・解るけど、アレは・・・・・・・・・・・・・ね」
「お前、石柱からずり落ちそうになってたよな、アル」
「だってアレ見たら噴くでしょ・・・・・・いや、解ってるんだ!常に空気を暖めてなきゃ上昇できないってのは理解してるんだ!だけど・・・・・・・・・・・・だけどっっ!!」
声も立てずにヒクヒクと腹を抱えてうずくまり笑う彼らにウィンリィさんが眉根を寄せて。
「ねぇ、何の話?あんた達何の話をしてるの?」
「ほ・・・・・ほ、焔の錬金術師様サマが・・・・・・・・・このポーズで絶えず指をパチパチと・・・・・・・・・っ」
身振り手振りでエドワードさんが説明する。彼の弟はまだ床にうずくまって笑い転げている。
ぶっっ!!!と、ウィンリィさんが色気もへったくれもなく盛大に噴出した。
それからなぜか半日もしないうちに、ロックベル家の居間は工学系の書籍や資料で溢れかえっていた。
「いくらなんでも展開速すぎやしませんかエドワードさんっ?」
「ん〜〜、あ〜〜?そうか?・・・・・・・・・んーっ、これもやっぱ蒸気機関か。工業技術の遅れが問題だな、アルフォンス」
「技術は悪くないと思うんですよね。蒸気機関をとても効率よく使ってるし。燃料の問題じゃないかな。どこかに化石燃料の記述ないですか?あ、アルフォンス君、それ見せて」
「おい、アルフォンス。これは?・・・・・・・って違うっまた石炭だ」
「古代植物が化石化して油になったものだっけ。アルフォンスさん、そしたら地中深くにあったりするのかな?」
「うん、そうだねアルフォンス君。海底にあることもあるよ」
「てことは・・・・・・ねぇ、もしかして掘ってみないとどこにあるか解らないんじゃない?アルフォンス君」
「・・・・・・・・・・・・・君たちには、呼び分けをしようという発想はないのか?」
この大量の資料を運んできてくれた、黒髪に眼帯の軍人さんが眉間に深くしわを寄せて僕らに問う。
「別に、俺たち困ってねーし。つか、まだ居たのかよ伍長さん」
「兄さん、そんな言い方伍長さんに失礼だよ」
「んじゃぁ、焔の錬金術師サマ」
えっじゃぁこの人が・・・・・・あんなポーズで指パッチンで気球でゆらりと!?
つい勢いよく向き直ってしまい、その人と思い切り目を合わせてしまう。
「く・・・・・・・っ」
だ・・・・・・ダメだ、笑いが・・・・・・・・・っ!
「彼は・・・・・・・・いったいなぜあんなに笑っているんだ?」
「な、なんでもありませんよー、マスタングさん」
ウィンリィさんも小刻みに身を震わせて顔を隠す。
「エド!ウィンリィ!アルフォンス!お茶の時間だよ!それとそこの軍人も!」
さっさと食堂に出ておいで、とピナコおばあさんが大声で僕らを呼ぶ。
「ばっちゃん!今、二人まとめて呼んだでしょう!!」
「あっはっはっ!お前たちは便利でいいねぇ」
「ひっでー手抜き」
げらげらと笑って、さぁ行こうぜとエドワードさんが立ち上がる。僕に手を差し伸べる。
僕らは並んで、みんなの後ろを付いて歩く。
「なぁ、お前・・・・・・あの時言ってたろ‘夢の中の存在じゃない’って」
「・・・・・・・うん。なんか、いろいろ言ったよね、僕・・・・・・・・・あぁ、立場が・・・・・・」
これで最後だと思っていたから言った台詞を思い出して赤面する。
だってまさか、こんなふうに違う世界で笑っているなんて思いもしなかったから。
「るせー。立場なんかより、お前が生きてることのほうが大事だろ」
うわぁすごい殺し文句だよとアルフォンス君がウィンリィさんに耳打ちする。
ああやって老若男女誰彼構わず手玉にとって来たのねあいつとウィンリィさんがひそひそと返す。
「ほんとうはさ、お前にとってはアッチが現実の世界でここが夢の中かもしんねーけど・・・・・・・・あいつ等裏切るような真似して、お前、ただで済むわけねぇって思ったし、俺のために・・・・・・人が死ぬのはもう、嫌だったからさ」
親父のことは助けられなかったから、と。静かな声で。
「うん・・・・・・・・・ありがとう、エドワードさん」
照れたように口を尖らせて、半歩だけ僕の前に出て。
「だから・・・・・・だからさ、もう、ここで良いってことにしてくんねー?」
良いも何も・・・・・・・・だって、あなたは、あなたたちは、こうして僕に居場所を作ってくれる。
勢いのまま流されるみたいにやって来たこの世界に、僕の居場所を。
「僕は・・・・・・この世界の住人に、なれますか?」
「あったりまえじゃないの」
「大歓迎だよ」
いつの間にか、前を歩いていたウィンリィさんとアルフォンス君が左右から僕の手を取る。
「あっ!お前らっっ!何、オレ恥ずかしいこと言うだけ言って放置!?」
「あはははは!兄さん恥ずかしー!」
「青春ね!青春だわ!!」
高らかに笑って。僕もつられて笑って。
楽しくて笑って。
幸せで。
のどかな村まばゆい緑、群青の空。
けれど豆台風を3つも住まわす、ここは、怒涛の楽園。
巻き込まれて流されてたどり着いた幸せの国。
僕はここの、住人になる。
優しい人たちに迎えられて。
「あ、そうだ。エド、アル。あんたたちに渡すものがあったのよ」
小箱の中に大切に収められていたそれを丁寧な手つきでウィンリィさんが取り出す。
断面をきれいに研磨された、小さな金属のプレート。それを2つ、彼らに渡す。
表面に刻まれた小さな文字。
『息子へ』と、ただ一言。
「あんたが着けてた義肢の、人工皮膚がかぶって見えないところに、ね」
「・・・・・・・・・バカ親父・・・・・・・・・」
まったく素直じゃないんだからと呆れたようにウィンリィさんが静かに笑って。
「兄さん、お墓参り行こうか。母さんの」
「・・・・・・ああ」
窓から二人の背中を見送る。風になびく髪が景色に溶け込む。
「おい、君達。せっかくのお茶が冷めてしまうぞ」
「あ、ほんとだ」
「あいつら居ないうちにアップルパイ食べちゃいましょ」
笑って。
お茶を囲んで笑って。
さあ、お茶を飲んだら飛行機の図面を引こうか。
ここに、この世界に、僕にも出来ることがあって。
僕を迎え入れてくれる人たちが居て。
僕は、この世界の住人になる。
END