『 ヤバイって!! 』










 気付いたら、俺は素っ裸で首から鈴を提げて、居間のソファーに座っていた。





 不思議と寒くはないけれど、この格好は人としてどうかと思う。
 裸はまずいだろ、ハダカは。
 一人暮らしの風呂上りならともかく、真昼間だし、俺、弟と暮らしてるし。


 アルがきちんと服着てるのに、俺一人ハダカでうろうろしてたら変だろう。
 や、兄弟二人素っ裸で家ん中、ふつーに生活しててもそうとうおかしい。どうかしている。
 どうかしているのはそんな想像している俺の頭の中だってのはとりあえず置いておいて、とにかく服を着ないとだ。
 つか、こんなカッコでふらふらしてたらぜってーアルに怒られるし。






 アルに見つからないうちにそっと自室に戻って服を着よう。
 そう思ってドアノブに手を掛けた途端、ドアが開いて廊下側に思い切り引っ張られる。つんのめって転びそうになったところを広い胸に受け止められる。


 見上げれば見慣れた金髪、取り戻した生身の弟の顔。


 ヤバイ怒られるっっ!!
「どこに行こうとしてたの?」
 そっちに行ったらダメだよ、と、何故かアルは優しいまなざし。俺、ハダカなのに?
「こっっ、コレは違うんだ!俺も知らないうちに気が付いたらこんな格好で!!」
「お腹がすいたの?寂しかった?さぁ、おいで」
 促されてソファーに戻って。

 アルが先に腰を下ろす。
 こんな格好のままどうすればいいのか惑う俺は、何故か突然抱き上げられアルの膝の上。


「なっなななななななんっっっ!?」
 うろたえる俺、蕩けそうに優しい顔のアル。
「びっくりさせちゃった?大丈夫、こわくないよ」



 いいいいいいいえコワイですっっ!
 お前がそんなフツーに優しい顔しているのがむしろお兄ちゃんスゲー怖いですっっっ!!



「でも本当に、綺麗だなぁ・・・・・・手触りも、すごくいい」
 変だ!!やっぱ変だ!!!
 うっとりと溜息まじりに変な事言ってるし俺の髪とかほっぺとか撫で回してるしあろうことか俺はそれが気持ちいいなんて思っちゃってるしっ!!
「アル!アルっっ!!変だ!変だって!!」
 必死に必死で訴えかけてもアルは全然表情を変えない。


 まるで言葉が通じていないみたいに。


「声まで可愛いんだね・・・・・・・・・あぁ、本当にすごく可愛い」
 うぅぅぅ弟が変、ものすごく変!背中から腰まで撫でられてざわざわと気持ちいい俺も変っっ!!
 焦りまくりで訳わからなくなっている俺をアルが、コロリとソファーに転がす。仰向けに転がされて、ハダカの下腹を撫でられて頬ずりされて硬直する。



 なんかこれマジヤバイってば!!!!!!
 い、息がいろんなとこ掠めてくすぐったい・・・・・・・・・うぅ、どこがとは言えないけどちょっとズキズキして来たしっっ!!



「鈴とリボン、とてもよく似合う。綺麗だしかわいいし、誰に見せても自慢できるね」
 ダメだってマジ駄目だって!!こんなカッコで人前出たら俺タイホされちまうって!!
 必死で首を振って拒否するのに、アルの瞳は澄み渡って優しい。
 困り果てて俺は横を向いて身体を丸める。
「可愛い。本当に可愛い。みんなに見せびらかしたいな、きっとみんなが羨ましがるね。だって、ちょっと居ないくらい可愛いもの」
 そんなこと言いながら、いたたまれなくてますます身体を縮こませている俺の咽喉をアルの指がくすぐる。
 まるで猫にしてやるみたいに。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・猫?





 そういえば、コレはまるで猫に対する扱いだ。そう考えれば納得がいく。
 そうか猫だ!そして俺は夢を見ているんだきっと!
 現実じゃないんだ嗚呼よかったコレは夢だ夢に決まってるぜそうとも!!

 夢だし猫なら、アルが可愛がるのも無理はない。あいつには絶対、可愛くない猫なんか存在しない。しかもこの俺、金髪金目で美少年の誉れも高いエドワード・エルリック様が猫なら綺麗でかわいいのも至極当然。



 はははは、そんなことならまぁ良いだろう。



 そうと決まれば遠慮は要らない恥ずかしがる必要なんかもまるでない。
 だってコレは、夢なんだから。
 俺を撫で回すアルの掌が気持ち良いのにも甘んじよう。たっぷり味わおう。


 だってコレは、夢なんだから。と、くすぐられている咽喉をぐぐっと伸ばして催促する。
 気持ち良いからもっと撫でろ♪




 だってコレは、夢なんだから。








 咽喉を身体を撫でられて気持ちよくて身体から力が抜けてゆく。
 でもだいじょうぶ大丈夫だってコレは夢の中。だからもっと撫でて撫でて気持ちよくして。
「兄さん。言っておくけど、夢オチじゃないから」



 ・・・・・・・・・え?



 楽しそうに、悪い顔でアルが笑っている。
「だから、これ、夢じゃないから。兄さん」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えぇっっ!?



 夢じゃないってことは・・・・・・・・・現実ですかコレ!?
 おおお俺ヘンタイ!?
 こんな素っ裸でオトートに撫で回されて半勃ちなんかなっちゃってて!?
「だって俺ハダカだしっ!いつもこんなカッコで日常生活なんか送ってないしっっ!!」
 なんで何時の間に俺こんな格好!?と大騒ぎの俺に、アルは相変わらず笑って。
「ん〜〜、兄さん寝ぼけてたし。最初はほんの悪戯のつもりだったんだけど、思いのほか可愛いし、途中から兄さんもノリノリでますます可愛いし」
「だだだだだって俺!夢だと思ってたしっっ!!」
「うん、でも、気持ちよかったんでしょ?」
 クスクス笑って、身体は嘘がつけないねぇと指差した先は・・・・・・・・・。


「見んな馬鹿エッチーーーーーーーっっ!!」


 慌てて股間を押さえる俺に、楽しそうにアルが覆いかぶさる。
「ぎゃーーーーーー喰われるーーーーっっ!!」
「ん〜、大筋で間違ってないけどいい加減往生際が悪いよ、兄さん?」
「だって抵抗しなきゃまずいだろうよ!」
 じたばた暴れる俺を弟は難なく押さえ込む。くそぅ、確かにこいつに力で勝てたことなんてないけどさっっ!!
「暴れない暴れない。兄さんだって嫌じゃないくせに♥」




 だからそれがヤバイんだって!!!!!!!!









 追記 : その後、彼が美味しく頂かれてしまったのは言うまでもない。




END