『 直視できない甘さ 』








 やけに広く見える背中。
 その右肩に3本、蚯蚓腫れを見つけて俺は慌てて目を逸らした。



 アルが生身の肉体を取戻して3年。人目を忍んで禁忌を重ねるようになって、それもまた同じ年月。
 夜毎、肌を重ね身体を繋ぐ。
 ひとつに戻ろうとする。魂と肉体が互いを求め合うように。
 快感の海の中で甘いあたたかな水底で。俺の意識はグダグダに溶けて俺の精神はトロトロに蕩けて俺はアルに満たされる。俺はアルで満たされる。
 肉体も精神も溶け合い交ざりあって、俺たちは融合するひとつへと還る。

 夜毎、痴態を繰り広げながら・・・・・・・・・。

 何時つけたのかも覚えのない真新しい引っかき傷。
 覚えていない。
 何時だってあの手管にあの甘い囁きにとかされてしまう蕩けてしまう。悪い男のような慣れた手管に何時だって骨抜きにされて。
『ぁ・・・・・・や、もぅ・・・・・・・・・変にな・・・る、っ』
 与えられたエクスタシーをうっかりと思い出して。
『いいよ・・・・・・兄さん、変になっちゃいな。・・・・・・ね、可愛い顔、見せて』
 低い甘い囁きが頭の中によみがえって腰がしびれて落ち着かない。
 身体が、甘い痺れを思い出して熱を熾して。


「・・・・・・どうしたの、兄さん?顔、真っ赤にして」
 クスクスと笑って、アルフォンスがベッドに腰掛ける。
 手にしていたグラスを呷る。俺の首を抱く唇を寄せる。
 差し込まれた舌を伝って、口の中に水が流れ込む。
 俺はそれを飲み下す。アルの瞳が優しく眇められる。
「もっと飲む?」
「ん・・・・・・・・・」
 更に2度、甘露で喉を潤す。ちからが入らなくてアルの肩に頬を寄せる。
 目の前には蚯蚓腫れ。
「アル、ごめん・・・・・・これ・・・・・・」
 肩に顔を埋めたまま謝る。くくっと笑う身体が小刻みに震える。
「ああ、これ?どうして謝るの?僕が兄さんのだ、って‘しるし’でしょ?」
 甘い声で俺を溶かす優しい声で俺を甘やかす。
「痛く、ねぇの?」
「んー、ちょっとピリピリするかな・・・・・・消毒してくれる?」
 エッチくさい流し目。俺はそれに頷きを返す。
「じゃあ・・・・・・舐めて」
 まるで催眠術のように声は俺を酩酊させて・・・・・・・・・。

 3本の傷に、俺は丹念に舌を這わせる。
 傷口を酷くしないようにたっぷりと唾液を絡めて舌先で舐めあげる。
 チロチロと、チロチロと。
 丁寧に、優しく。チロチロと、舌を這わせる。
「・・・・・・ん・・・・・・・・・っ」
 舐めているのは俺なのに、まるで愛撫されているように、感じて。気持ちよく、て。
 ・・・・・・・・・熱い、よ・・・アル・・・・・・・・・。
「もう、いいよ。ありがとう兄さん」
 感じちゃったの?と、吐息のように俺の耳元でアルが囁く。
 そんなことねぇもん。口を尖らせる。勃ち上がって敏感になった乳首を指先ではじかれる。
「ぁ・・・・・・っん」
 嘘つきだね。笑って、アルが俺の内腿に手を伸ばす。
「ねぇ・・・・・・・・・僕も、兄さんに‘しるし’つけて・・・いい?」
 ここに、と、脚の付け根に近い部分を指先がなぞって。
 いいよ・・・・・・俺に、印をつけて。俺をもっとお前のにして。

 アルが其処に顔を埋めるきつく吸い上げる柔らかな皮膚に歯を喰い込ませる。
 痛みを伴った快感に俺は甘い声を上げて。

 ああ、もっと、もっと俺をお前のにして。しるしを付けて・・・・・・・・・。






 今日は休日。

 まだ暫く、俺たちはベッドから出られそうにも、ない・・・・・・・・・。








END