『 憎らしいほど愛しいあなた 』
男とは、なんて愚かな生き物なんだろう。
「アル・・・・・・・・・アルぅ・・・・・・」
おうちに入れてここを開けてと扉を掻く猫のような必死さで。
「もう、かさぶた剥かないから・・・・・・アルぅぅ」
アルーアルーアルー にゃーにゃーにゃー
解ってる。判ってるんだ。
その甘えた声も、猫のような仕種もどれもこれも何もかもが、僕の気を引くために計算しつくされたものなんだっていうことは。
判ってる・・・・・・・・・・・・・解っているのに・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「兄さん・・・・・・おいで」
兄さんを締め出していた扉を開けて、人間兵器を自分の部屋に招き入れる。
男なんて、所詮愚かな生き物だ。
それが罠だと判っていてもわざわざ掛かってしまうんだ。自分から。
「アルっ!!」
うれしそうに僕の首に抱きついて頬ずりをする。
外出から戻った子猫そのもののような仕草。会いたくて堪らなかったと言わんばかりの。
さっき、一緒にご飯食べただろ、兄さん。
「アル♪アル♪」
これが本当の子猫だったらきっと、尻尾なんかピンと立って先っぽピルピル震わせて、咽なんかゴロゴロゴロゴロ鳴らしっぱなしだ。
・・・・・・・・・堪らない。
こんなふうに全身で愛を語られたら。
可愛くて可愛くて堪らない・・・・・・・・・。
あぁ、判ってる。解ってるんだよ。それもこれも兄さんの作戦なんだってことは。
猫好きな僕を日々観察する兄さんの研究の成果なんだってことは!
解ってるけど、仕方がないじゃないか!だってこんなに可愛いんだ!こんな可愛い生き物に擦り寄られて平静で居られるわけがないだろう!?
仕方ないだろう。男なんて所詮は愚かで悲しい生き物なんだから!
諦めと開き直りがごちゃ混ぜになった気分で、僕は兄さんに口付ける。
柔らかな唇を甘い唾液を味わいながら、ゆっくりと兄さんの長い髪を解く。
唇で頬を撫で首筋まで伝う。兄さんの唇からくるおしいためいきがほろりとこぼれる。
「は・・・・・・ぁ、ん・・・・・・・・・・・・・」
上気した頬、潤んだ瞳。
鎖骨をきつく吸い上げて、さらに下へ伝い降りる。
犬歯で、シャツのボタンをひとつ噛み千切る。
うっとりと苦しげに僕を見つめる。蕩けてしまいそうな、熱い、吐息。
兄さん一人を全裸に剥いて背中から抱きしめて膝の上で可愛がる。
指先で掌で唇で、その滑らかな肌を確かめる。
甘い声で僕を呼んで泣きそうな声で幸せだなんて言うから、堪らなくて愛しさがとめられない。
「アル・・・・・・ぅんっ・・・す・・・・・・・き・・・・・・・・・」
ふるふるとせつなく首を振って金の髪を乱すその姿がきれいで愛しくて。
「愛してるよ、兄さん・・・・・・・」
汗の浮いた肌に口付ける。吸い上げて紅い花を咲かせる。
取り戻した兄さんの腕、機械鎧を外した右肩にいくつもいくつも口付けの花を散らす。
玉のような汗が花を飾る。薔薇のTATOOを刻んだみたいな艶めかしい肌を飾り立てる。
「・・・・・・アル・・・ね、欲し・・・・・・・・・い、よ・・・・・・・」
身体を繋いでしまいたいと、喘ぐように。
「まだ、だよ。もう少し・・・・・・我慢していて」
(そう、まだだ。もう少し辛抱していろアルフォンスJr)
「ア・・・ルぅ・・・・・・・・・」
いやいやと首を振って僕の名前をせつなく呼んで。
「俺を・・・・・・ぜんぶ・・・・・・・・・アルの、に・・・・・・して・・・・・・・・・・・・」
嗚咽まじりに我侭を言って僕の膝に腰を擦り付けて、濡らす。
「今はだめ・・・・・・・・・いい子にしてたら、いっぱい気持ちよくしてあげるから」
(だからちゃんと我慢してろすべては傷が癒えてからだ。治ったら存分に好い思いさせてやるからムスコよ!)
「や・・・・・・ぁ、アル・・・・・・・・・・ア、ル・・・っ」
指先で掌で唇で、兄さんの熱い肌を宥め賺して。
(はしゃぐな落ちつけアルフォンスJr!)
例えて言うなら。
目の前にはすごいご馳走。口の中には口内炎。
食べたい。でも、今は食べても味がわからないどころか血を見ることは明らか。
そんな状況。
僕を待ちわびる熱を帯びたソコをアルフォンスJrが突入の時を待ちわびるソコを。
僕は指を使ってその内部を可愛がる。額に脂汗を浮かべながら。
(頼むから静まってくれアルフォンスJr・・・・・・・っっ)
ズキズキとした疼きを痛みを堪えながら。
生殺しな気分を存分に、味わいながら・・・・・・・・・。
放埓を終えて力尽きて眠る兄さんの頬にくちづけを落とす。
相変わらず人の気も知らずにすやすやと。
その無邪気な寝顔が少し憎らしい。憎らしくて・・・・・・・・・愛しい。とても。
「解ってるのかよ、兄さん・・・・・・・・・」
愛してるから、こんな苦労もしてしまうんだってこと。
「わかんなくても解れ、兄さん」
可愛らしい鼻をつまむ。きゅっと眉根が寄って、ぶぅ、と子豚みたいな声が漏れた。
あぁもう、可愛くて堪らない。
********
そして数日後。
「や・・・・・・・・・・った・・・・・・!」
ついに、この時が訪れた。
かさぶたのあった表皮のどこも引き攣れない。いつまでも消えなかった内出血のあともきれいになっている。一時期なんか噛まれた痕が紫から緑に変色してこれは本当に治るのだろうかと本気でドキドキした。
何よりも! 体積を増してもドクドクと正常に脈打つだけで、あの鈍く重く疼く痛みはどこにもない。
祝!Jr、完治!
これでもう思う存分パラダイス!
さぁ、我がムスコ、アルフォンスJrよ!共に行こう、僕を待つ兄さんの聖地へ!!!
シャワーの水滴を拭い去るのももどかしく、腰にバスタオルだけ巻きつけて浴室を飛び出す。
「兄さん!!」
居間から出てきた兄さんを抱き上げて攫う。ベッドの上に放り投げる。
「アル・・・・・・?」
押し倒されて頬を染めながら兄さんが可愛らしく僕を見る。
「待たせたね、兄さん・・・・・・・・・治ったよ」
「本当に・・・・・・?アルっ!!」
やっと・・・・・・・・・・・これでやっと・・・・・・・。
「ああ。たくさん可愛がってあげるよ、兄さん」
バサッ!
音を立てて勢いよく腰のバスタオルを取り去る。
兄さんがうっとりと笑って視線を下げる。
熱っぽい視線が顎先を伝い胸元を過ぎて・・・・・・・・・Jrを見て、凍りついた。
「・・・・・・・・・・・・・無理・・・・・・・」
赤かった頬は色を失い次第に青くなるグラデーション。
「ムリっ!そんなの無理!ありえないそんなアナコンダ!!」
ジリジリと、僕の下で兄さんが後ずさる。
「大丈夫だ兄さん、成せば為る」
逃げをうとうとする兄さんの手首を僕はガシッと握って。
やだなぁ、兄さん。今更逃がすわけないだろう?心の中でつぶやいて兄さんには微笑みを返す。
「うぎゃああ!助けて!蛇が来るーーーーーっっ!!」
「大丈夫、怖くない怖くない」
「怖い!!」
「怖くないよー」
「うそだ!腕くらいあるっっ!!」
腕だなんてそんな大げさな・・・・・・・・・あ、でも確かに小柄な女の子の肘先くらいはあるかも。
我ながら驚きのビッグサイズ。偉い張り切りようだな、アルフォンスJr。
「大丈夫大丈夫」
「いやぁぁぁぁぁ!!殺されるーーーーーーーーーっっっ!!」
嫌・・・・・・?
握っていた兄さんの腕を放す。ぱさりと音を立ててシーツに落ちる。
「そう・・・・・・。兄さんがそんなに嫌がるなら仕方がないね・・・・・・・・・」
静かに言って、溜息をつく。
「・・・・・・・・・・アル・・・?」
不安そうに僕を見上げる兄さんを残してベッドから降りる。
少し、頭を冷やしてこよう。それともその前にトイレで抜くか・・・・・・。
考えをめぐらせながら、洋服ダンスに手をかける。
「ヤダッ!!」
あわてて、兄さんがベッドから飛び降りる僕にすがりつく。
「俺、頑張るから!俺が頑張るから、他のヤツのところになんか、行っちゃヤダっっ!!」
必死な顔で僕の腕をつかんでボロボロと涙をこぼして。
・・・・・・は?
なんなんだその発想は。
何でそんなふうに思ったのだか、毎度のことながらその突拍子もない思考回路には驚かされる。
僕の腕を放すまいと、他のヤツの所になんて行かすまいと、僕の腕を強く抱いて離さない兄さんの髪を空いた手で撫で梳いて。
「頑張れる?」
「頑張る」
「キスして、兄さん」
小柄な兄さんが踵を浮かせてくちづける。
拙いキス。拙くて、愛しい。
ばかだな、兄さんは。
他の人のところになんか行かない。いいや、行けない。
だって兄さんがこんなにも愛しい。
兄さんばかりがこんなにも愛しい。
「力抜いて・・・・・・・ゆっくりと息を吐いて・・・・・・・・・」
指先で、兄さんをあやしながら僕はゆっくりと侵入を開始する。
「ア・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・ぁ・・・・・」
小さく声を漏らしながら、兄さんが僕の腕に指を食いこませる。
食いしばろうとする歯列を割って深いキスをする。兄さんの身体からほっと力が抜ける。
「入ったよ、全部」
え?とちょっと驚いた顔に、僕は笑ってキスをする。
「・・・・・・入ったんだ・・・・・・・・・」
感慨深げに、兄さんが自分の腹をさする。
「こんなかに・・・・・・・・・アルが居んだ・・・・・・?」
「そうだよ。よく頑張ったね、兄さん」
うれしそうに微笑んで、兄さんが僕の頬に触れる。
「ね、キツくない?・・・・・・・・・・動いても、いい?」
「ん・・・・・・きて、アル・・・・・・・・・」
そっと、兄さんに負担が出来るだけ掛からないようにそっと、僕は腰を滑らせる。
熱く柔らかな内壁。潤滑剤の力も借りてぬるぬると気持ちいい。
「アル・・・・・・・ぅっ」
引き抜く動きに、兄さんの中が絡みつく。僕を逃がすまいと、まるで絞り上げるみたいに。
き・・・・・・気持ちいい・・・・・・・・・っっ!
禁断の聖地の中は眩暈がするほどの快感で、長いことお預けを食らっていたせいもあって僅かでも気を抜くと、うっかり極めてしまいそうになる。
駄目だ・・・・・・ここでイッたりしたら幾らなんでも早すぎる。
堪えろ、堪えてくれムスコよ・・・・・・!
「あぁ・・・・・・んっ、アルぅ・・・・・・・・・っ」
甘く細く兄さんが声を上げる。熱くぬれたソコが僕を締め上げ咀嚼する。
堪えるんだ・・・・・・ここでイッたら三こすり半にもなりやしない。とてもじゃないけど洒落にならない。
堪えろ・・・・・・堪えてくれ!
頑張るんだ、アルフォンスJr!!!!!
END