『 Fine,Shine,Fill The Moon 』









 誓いのキスから始まる夜。
 未来永劫ただあなた一人にこの愛を捧げると、ただあなただけに誓って。
 ‘自然の摂理’からも‘神様の教え’からも外れてしまった僕らはただ、お互いにだけ、永遠を誓って。




 やさしく触れるだけの軽いキスを落として、兄さんの服をそっと落として。

 甘い口付けと溢れて止まらない愛しさで、窓から覗く月をたっぷりと満たそう。









 差し込む月明かりが兄さんの肌を乳白色に照らし出す。
 鋼の右腕と左の足は鈍く輝き、あなたの身体を走る大きな疵はほの紅く染まって滑らかな肌に彩を添える。
 色っぽくて・・・・・・ぞくぞくする。
 はちみつみたいに蕩けた瞳も、たくさんキスしてぽってり腫れた口唇も。
 どこもかしこも、いやらしくて、きれいだ。
「兄さん・・・・・・口、開けて」
 飽きることなく唇を吸って、舌を潜り込ませて歯列を割って。
 舌先で、上口蓋を愛撫する。さっき見つけた兄さんの性感帯。
「んぅ・・・っ、ひゃ・・・・・・・・んぁ」
 溢れてぴちゃぴちゃと音を立てる唾液を啜る。
 狭い口の中を僕の舌で犯して。
 紅く染まって唾液に濡れた口唇。いやらしく腫れた口唇。

 そのあたたかく濡れた口の中に、僕を咥えさせて、犯してしまいたくなる。
 その狭い口の中いっぱいに頬張らせて咽喉の奥まで僕のものにして。

 ああ、でも今はあなたの快楽を追って。
 あなたの快楽の源を全部暴いてあなたを快楽の海に沈めて。
 だから、ねぇ、もう二度と僕から離れたらダメだよ。
 あなただけを愛するから、ねぇ、兄さん、もう二度と離れないと言って。二度と離れないで、もう僕を置いてどこへも行かないで。
 もう二度と、僕は間違えたりしないから。



 兄さんの舌先を甘く噛んでゆっくりと唇を離す。
 唾液が糸をひいて滴り落ちる。
 焦点の定まらない金色。媚びるみたいに僕を見上げて。
「アル・・・・・・・・」
 低くかすれた、甘い声。
 色っぽいね。色っぽくて、もっと啼かせてみたくなる。
「兄さん・・・・・・愛しているよ」
 琥珀のような瞳が揺れて、兄さんがうっとりと微笑む。その笑顔が儚くてきれいでたまらなく色っぽくて、同じ言葉を繰り返す。
「愛してる・・・・・・・・愛しているよ、兄さん」
 兄さんの両腕が僕に絡みついて引き寄せられて。
「アル・・・・・・アルフォンス。俺も、愛してる・・・・・・」
 濡れたくちびるが、甘い声音が僕の名前を丁寧に紡いで。
 愛しさに背中を押されるまま、僕は兄さんの身体をベッドに埋めた。


「ん・・・・・・アル・・・」
 指先で掌で唇で。
 僕は兄さんの肌を味わって。ところどころできつく吸い上げて、その肌に紅い花を咲かせて。
 あなたのからだじゅうに、僕を刻み付けて。
 兄さんのすべてに、僕のしるしを刻んで。
 だから、ずっと僕のものでいて。ずっと、一生、僕だけを愛して。

 小さく尖った乳首にキスをする。
 乳輪ごと吸って舌先で転がして。
「あ、ぁ・・・・・・っ」
 兄さんの背中がビクっと震えて、弧を描く。
「ここ、気持ちいい?」
 チュっと音を立てて何度も吸い上げて唇ではさんで扱きあげて。
「ぁ・・・んっ。アル・・・・・・・あぁっ」
 僕の頭を掻き抱いて切なく身を捩ってかすれた喘ぎをもらして。
 その様が僕を煽り立てる。
 もっともっと声を上げさせたくて、もっとたくさん気持ちよくしてあげたくて。
「乳首、凄く感じやすいんだね。ぷくって尖ってるの、わかる?・・・・ねぇ、知ってる?男の乳首でも、たくさん可愛がってあげると大きくなるんだって」
 唾液を絡めて、わざといやらしくそこを舐めあげて。
「ね・・・・・・おっきくしちゃおうか?毎日可愛がってあげるよ、兄さんの乳首感じやすいから・・・・・・大きくなったらきっと、もっともっと気持ちよくなっちゃうね」
 兄さんの性器が震えながら僕の腹に当たる。まるで、そうなることを期待して悦んでいるみたいに。素直に快感を示すその器官が可愛くていとしくて、僕は自分のものと擦り合わせた。
「あ、あぁっ・・・・・んんぅ」
 眉根を寄せて、唇をわななかせて。
 兄さんの口から切ない啼き声があがり、目元がひときわ鮮やかに染まる。
「気持ち、いい?兄さん・・・・・・」
 問いかけにコクコクと頷いて、兄さんの指先が僕の背に食い込んで。
 爪を立てないように気をつけているのが、判る。

 良いよ、爪を立てても。

 もっと、我を忘れるくらい感じさせてあげる。
 理性なんか保てないくらいに。
 爪を立てて良いよ、疵をつけて良いよ。
 僕はあなたを僕のものにするから、兄さんもちゃんと、僕をあなたのものにして。
 僕にもちゃんと、あなたを刻んで。全部、あなたにあげるから。
 乳首を啜りながら、掌で兄さんの性器を愛撫する。
 熱く脈打ち、僕の手の中でせつなく震えて快感の涙をほろほろとその先端から溢れさせて。
「ア・・・ルっ。ダメ・・・・・・ダメだ・・・・・・・・いっちゃ、う・・・っ」
 腿で僕の腰を挟んで、堪えるように首を振って。
「いいよ、イッて。兄さんがイクとこ、見せて・・・・・・」
 ぎゅっと目をつぶってイヤイヤをして、恥ずかしいと目元を紅くして。
 乳首を甘噛みして左手で兄さんの性器を擦って、僕は、開いた右手をその奥に忍ばせた。
 可愛らしい双子の珠を掌で転がして、伸ばした指先でその付け根から張り詰めた薄い皮膚をやさしくなぞって。
「あ・・・あぁっ!ダメ・・・・だ。い、くぅ・・・っ」
 兄さんの背がひときわ大きく撓り、細くて甘い悲鳴が漏れる。
 手の中のそれはビクビクとのたうって、濃厚な白を噴出した。




 荒く息を吐いてベッドに沈む兄さんの身体を湯で絞ったタオルで清め、僕は横たわり、未だ恍惚としている兄さんを抱き寄せた。
 触れるだけのキスを繰り返して、力の抜けた身体をただ、やさしく撫でさすって。
 このまま眠ってしまってもいいと思った。
 ただ、やさしくしたい。
 兄さんが気持ちよくなれたのなら、それで良いと。
 だって、酒のせいで記憶はおぼろげだけれども、あの夜きっと僕は兄さんに酷くした。
 ガラガラだった声、乾いた涙の痕、よろよろとおぼつかない足元。
 だから今は、やさしくしたい。
 ただ、やさしくしたい。
 あなたが快感を得られたなら、ただ、それだけで良いから。


 もうだいぶ呼吸も落ち着いて、そのままとろとろと眠ってしまうかと思っていた兄さんが、ゆっくりと、半身を起こした。
「ん?どうしたの、兄さん?咽喉でも渇いた?」
 僕も起き上がって兄さんの背を支える。
「アル・・・・・・・・アルフォンス・・・・・・」
 少しかすれた小さな声で兄さんが僕の名前を呼んで生身の左手が、おずおずと、熱の治まりかけていた僕の性器に触れてきた。
「・・・・・・兄さん?」
 そのまま僕の膝の辺りにうずくまり・・・・・・・僕の先端に唇を寄せた。
「に・・・っ、兄さん?」
 赤い舌が口元に覗く。子猫がミルクを舐めるみたいにチロチロと舌を這わせて・・・・・・・。
 兄さんが僕に触れて。いやらしく腫れた唇が、僕の男を咥えて。

 興奮する。
 全身から引いていこうとしていた熱が、激しく再燃する。
 力強く立ち上がったそれが兄さんの頬を叩いて。
「わ・・・・・・すげ・・・。気持ち、いい・・・?アル・・・・・・・?」
 喜色を浮かべた瞳が僕を見上げる。口元がほころぶ。
「気持ちいい、よ。兄さんがそんなことしてくれるなんて、どうにかなっちゃいそうだ」
 ふわりと笑ってまた、兄さんが僕の股間に顔を埋める。両手を添えて、丁寧に僕を舐め上げて。
 大きく唇を開いて、僕のを飲み込んでゆく。あたたかく濡れた口内が僕を迎え入れる。ぴちゃぴちゃと音を立てて舌を絡めて。全部咥え切れなくて、また何度も挑戦して。
 苦しそうに寄せられた蜂蜜色の眉、鼻からもれるくぐもった喘ぎ。無自覚なのかわざとなのか、高く上げた尻が誘うように揺れて。
「兄さん・・・・・・もう、いいよ。ね、お尻、こっちに向けて・・・・・・」
 恥ずかしがって躊躇う兄さんの腰を半ば無理矢理に引き寄せる。
 一度放埓を終えていた性器がまた、熱を蓄えて勃ち上がって震えて。
「勃起してる。兄さん、僕のを舐めてただけなのに・・・・・・感じちゃった?」
 泣きそうな顔で僕をにらんで。
「そんな顔しても可愛いだけだよ」
 笑って、僕は兄さんの形のいい尻丘にキスをして。
 割り開いて現れたその、つつましい窄まりを月明かりに晒して。
「ねぇ、兄さん・・・・・・ここ、されるの、嫌?」
 顔を紅くして小さく首を振って。
 注意していないと聞き取れないような、かすれた囁きで・・・・・・。
「ヤじゃない・・・・・・・。して、俺を・・・・・・アルのに、して」



 兄さんが焦れて泣き出しそうになるほど、念入りにそこをほぐして。
 奥のほうに2箇所、兄さんのイイところを見つけて。
「力、抜いてて。その体勢、きつくない?」
「いいから・・・っ」
 兄さんの身体が楽なようにと、後ろから入れようとしたら嫌がられた。
 ほとんど折り曲げるようになってしまうこの体位では兄さんが辛いんじゃないかと思うのだけど、顔が見えなきゃ嫌だと言われた。
「ゆっくり息はいて、兄さん・・・・・・・挿入るよ」
 兄さんに負担をなるべくかけないようにゆっくりと侵入を始める。
 中は熱く蕩けて、潤滑剤の力も借りてぬるぬると僕に絡み付いて。
「あぁ・・・・・・・・・・んふ、ぅ・・・・・・」
 呼吸を合わせるように、兄さんがゆっくりと息を吐き出す。
 額に浮いた汗を唇で吸って、瞼に小さくキスをして。
「全部、入ったよ。ほらここ・・・・・・わかる?」
 兄さんの左手を取って、結合部にふれさせる。おずおずと、そこを確かめて。
「・・・アル・・・・・・だ」
「うん」
 うっとりと笑って、僕の首を抱く。
 この格好じゃキツイだろうに、とても、とても嬉しそうな顔で。

 愛しい、な。すごく、愛しい。

 そろそろと、探るように動かし始める。
 無理をさせていないか、辛そうな顔はしていないか。
 気持ちよくしてあげたい。
 ただ、気持ちよくしてあげたい。
 あなたを幸せにしたい。
 気持ちいいことばかりをあげたい。

 僕を飲み込んだ柔らかな肉が、動きに合わせて僕を締め上げ咀嚼する。
 兄さんの中で、更に重く体積を増す。
「あっ、あっ・・・・・・んっ・・・・・・あ、アルっ」
 甘い声が僕を呼んで。細い腰がねだるように淫らに揺れて。
「いい・・・・・っ。アル、いいよぉっ・・・・・・・・奥のほう、いい・・・」
 兄さんの先端から溢れた先走りが僕の腹に擦れて濡らして、いやらしい水音を立てて。
 兄さんが特に感じるところを交互に突いて、擦りあげて、もっともっと善がらせて。
「ここ・・・・・・だよね?ここ擦ると、凄いよ、兄さんの中・・・・・・きゅうって締まって、ドクンドクンって動いて僕のを美味しそうにしゃぶって・・・・・・凄く、気持ち良いよ」
「気持ち・・・いい?アル・・・・・・俺の中、気持ちいい?俺、お前のこと気持ちよくしてあげられてる?」
「いいよ、もちろんだよ。だって、好きな人の中だよ?凄く・・・気持ちいいよ」
 兄さんの顔が、泣きそうに、歪んで。
「アル・・・・・・もう、他のヤツんとこ、行かない?もう、女のとことか、行かない?」
 胸が、締め付けられるように、痛んだ。
 こんな、泣きそうな声で聞かれるなんて思ってなかった。
「兄さん・・・・・」
「ずっと、嫌だった・・・・・・寂しかった。ずっと、アルのことが・・・好きで・・・・・・抱いて欲しかったけど、言えなくて、言える筈・・・・・・なくて。お前が香水の匂いつけて帰ってくるの、すごく嫌で・・・・悲しくて」
 本当に、僕は馬鹿なことをしていた。
 触れてはいけないと一人で思い込んで大切にしているつもりで、外で欲望を処理して、ただ一人愛している兄さんを寂しがらせてこんな悲しい顔をさせて。
「もう、行かない。他の誰のところにも行かない。もう、あんな馬鹿なことは、しない。約束する。もう、あなたを寂しがらせないから・・・・・・・だから、そんな悲しい顔、しないで」
 ごめん、ごめんね。悲しい思いをさせて・・・・・・・ごめん。
 せつなくて、きつく抱きしめた。ほったらかしにされていた兄さんの性器が擦れてトクンと大きく震えて。
 僕は動きを再開する。
 短くインターバルを置いていた身体はより敏感に反応して・・・・・・・。
 兄さんの息が上がる。目尻に涙を浮かばせて長い髪を波打たせて。
 兄さんの中はとろとろに蕩けて僕を包み込んで吸い付いて。
 強烈な快楽が僕の理性を食い荒らして。
 兄さんの上気した頬、濡れてわななく唇、シーツの上に散るきれいな金の髪。
「アルっ!アル・・・っ!あ・・・・・・・っも・・・・・いく・・・っ。いっちゃ・・・・・・・ぅん」
 甘い善がり声荒い息遣い兄さんの汗の香り、僕を酔わせる強烈なフェロモン。
 視覚から聴覚から嗅覚から、肉体から。
 兄さんが僕を快楽に酔わせる。
 絶頂に押し上げる。
 僕は兄さんの中をかき混ぜて兄さんの快楽の源を擦り上げて喜ばせて、兄さんを頂に押し上げて。
 快感は加速して僕らは同じリズムで吐息を刻んで同じリズムで動きを早めて。
「ああ・・・・・・僕もイキそうだ。しがみついてて、兄さん・・・・・・」
 僕らはひとつになって何一つ隔てるものもなくひとつになって肌も意識も融合して窓から射す白い白い光の中で溶け合って混ざりあって僕らがかつてひとつのものであったと、分かたれたひとつのものであったのだとその映像が唐突に脳裏に浮かんで・・・・・・・・・。
 それは薄いガラスのように一瞬で砕けてひときわ烈しく光り弾けて空虚だった月の中を光の水のようになみなみと満たして・・・・・・・・・・・・・。

 僕らは、絶頂を迎えた。二人、同時に・・・・・・・・・。













 兄さんを腕の中に抱いて昼近くまで心地よい眠りを貪って。
 ようやく起き出して台所に足を踏み入れて・・・・・・・・・僕は頭を抱えた。
 留守中のことは、鍵を預けておいたウィンリィがやってくれてあったので、何かが腐ったりひからびていたり等の恐ろしいものはなかったが。
「やばい・・・・・・・・食料買って帰るの、忘れてた」
 そこに、兄さんがひょっこりと顔を出す。
「え?食うもんなんもねぇの?昨夜はまっすぐ帰ってきたからな・・・・・」
「ごめん、すっかり忘れてた」
「いいって。朝飯食いに行こうぜ・・・・・・・となりに」
「そうだね・・・・・・・・隣に。ただちょっと・・・・・・」
「ん?何?」
 きょとんとした顔をして、兄さんが小首を傾げる。
「お隣のお嬢さんはとても聡くていらっしゃるのでその・・・・・・何かといろいろお気づきになられておられるのですよ・・・・・・・・」
 ふふ、と笑って、僕は遠くに視線を漂わせる。
 今度は兄さんが頭を抱えてうずくまる。
「・・・・・・・あぁぁ、あいつ勘が鋭いからな・・・・・あぁ、でももう仕方ない。ウィンリィなら他人に漏らすようなことはしないだろうし・・・・・」
「そうだね。ただ・・・・・・」
「ああ」
 親身になってくれる分、僕らのこの関係がウィンリィを悲しませるだろうと兄さんも解っているんだろう。
 兄さんは、少し辛そうに瞼を伏せて・・・・・・、でも、それはすぐに何かを決意した表情と変わった。
「今更しらばっくれても仕方ない。小言くらい幾らでも聞くさ」
 それでもこれが自分たちの決めた生き方だからと、兄さんが僕に笑いかけた。
 ああ、本当に、僕らは離れてはいられない。
 人の道からも自然の法則からも神様の教えとやらからも外れて、僕らは血のつながった兄弟同士で愛し合って。
 でも、これが僕たちが決めた生き方だから。離れて生きることは出来ないから。
 僕たちはここでひっそりと生きて。
 僕たちを大切に思ってくれる人たちを悲しませてしまうけれども、離れて生きてゆくことは出来ないから。お互いの命を精神を削り落とすだけだから。


 僕たちのことを大切に思ってくれる人たちに感謝と謝罪の言葉を小さく呟いて、兄さんと二人、ここで息を潜めて生きてゆく。
 ずっと・・・・・・いつまでも。






END