『 僕の内にあるもの 』




確かに今は空洞の鎧。
鎧の中に入れるべき肉体を持たない、精神だけの存在。
肉体という器を持たない魂だけの僕は
ならば『人間』と呼べるのだろうか?


ほんの少し前まではそんなことに悩んでいた。


「アル。おい、アル!」
兄さんが僕を呼ぶ、僕に笑いかける。
「向こうの通りで、面白いモン見つけたんだ」
僕の手を引いて、笑いながら駆け出す。
僕を呼ぶ兄さんの声が
僕の魂を『人間』として定義づけてくれる。
その笑顔のやわらかさ、言葉の温度を僕ははっきりと、魂で感じる。
それらはみんな、僕を形づくる鎧の身体に染み渡り
幾重にも幾重にも折り重なって
この空っぽの身体の中を満たしてゆく。
僕のこの身体の中には
兄さんの優しさや思いやりが宝物のように詰まっている。
兄さん、あなたがこの名を呼び続けてくれる限り、僕は空ろじゃない。
今はもう、そう思えるから。
僕はもう、迷わないでいられる。