【 それは遠いお伽語り 】






 さて今宵は、そのお社に祀られる神様のお話をさせて頂くといたしましょうか。
 その小さくのどかな村に伝わる、古いふるいお話でございます。



 鎮守の森を背にしたそのお社は、名を『双嚢神社』と申します。
 質素ながらも手入れの行き届いたお社には、二人の、兄弟の神様がお住まいでございました。

 弟神様はよく里に降りてこられては、人々の生活を優しく見守っておいででした。
 兄神様はあまり人前には御現れにならず、お社の奥でお休みになっておられることが多くておいででした。

 村は、小さくのどかではありましたが土壌もよく、鎮守の森から流れ来る清らかな水が田畑や人々を潤しました。
 村は小さくはあれど豊かでした。飢饉や干ばつに見舞われることなく、穏やかで豊かでした。




その日もいつものように、弟神様は里においでになりました。
大きな石に腰を掛け、農夫たちが畑仕事をするのを眺めておいででした。弟神様の足元には農夫の子らが集まり遊んでおりました。弟神様は子らにさまざまなお話を語り聞かせてあげました。
始まりの頃の神々のお話、冒険をした人間のお話、森に住まう獣たちのお話。子らは固唾を呑んで弟神様のお話に聞き入りました。朗らかな笑い声が、絶えず上がっておりました。

 村は、とてもとても幸せでございました。

 ふと、弟神様が面をお上げになりました。
 遠くの山の頂あたりをご覧になり、それから風の匂いを嗅がれました。
 農夫たちに、直に雨が降りてくるとおっしゃって、弟神様は手ずから鋤をお取りになりました。恐縮する農夫たちに優しく笑いかけ、早く済ませてしまおうと畑にお降りになりました。

 真っ黒い色をした雨雲が、村に近づいてまいりました。

 けれど弟神様と農夫たちは、その雨雲が秋の初めのひやりとした雨粒を地面に落とす前に、仕事を終える事ができました。
 汗を拭う弟神様に、子らが花冠を差し出しました。
 それは祭りに使うものを真似た、白い白い花冠でございました。
 拙い手先でようよう編んだそれを弟神様は上手に出来たとお褒めになって、嬉しそうなお顔でお受け取りになりました。

 豊かな実りを祝う祭りの折には、村の女たちの手で、それは見事な花冠が編まれるのでございます。
 男も女も子らもみな花冠をかぶり、兄弟神様への深い感謝をこめて歌い踊りて、豊かな実りを祝うのです。

 中でもとりわけ美しく編まれた冠は、兄弟神様にささげられ、神様みずからお被りになられます。

 それはたいそう栄誉なことでございました。
 ですから、子らは皆、いつか自分の編んだ花冠を兄弟神様に被っていただこうと、大人たちの手を真似て手習いを重ねてゆくのです。

 後ろのほうにいた、年上の子が、背に隠していた花冠を弟神様に差し出しました。
 鮮やかな赤い花で編んだきれいなきれいな花冠でした。
 兄神様にと子らが言うと、弟神様はたいそう嬉しそうに笑まれました。皆の頭を優しく撫でてくださいました。


 子らは、いえ、村の者たちは皆、兄弟神様が大好きでした。愛し敬っておりました。
 兄弟神様もまた、村のものたちを慈しんでおりました。


 皆、とても幸せでした。とてもとても幸せでした。





 空からはじめのひとしずくが落ちてくる頃、弟神様はお社にお戻りになりました。
 薄暗くなったお社の奥には、小さな明かりが灯されておりました。


 灯りに照らされ浮かび上がるのは、弟神様の分身であらせられる大きな鎧様でございました。
 その鎧様の御膝の間には、兄神様が、まるで美しいお人形のように裸で座して、力なくしなだれかかっておられました。

 兄神様は、とろりと濡れたまなざしで、弟神様を見上げ微笑まれました。

 鎧様の大きな右手が、ゆっくりとやさしく、兄神様のすべらかな御肌を撫でておられました。
 その掌が珊瑚のような乳首に触れるたび、形よく浮き上がった腰骨をなぞっていく度、兄神様は、甘く息をお吐きになりました。
 兄神様の腰の奥、赤くほころんだ小さな蕾には、鎧様の太いお指が埋め込まれておいででした。
 鎧様が、ゆるゆるとお指を浅く抜き差しするたびに、兄神様はせつなく身悶え、細く蕩けた声で弟神様をお呼びになりました。
 それはもう、甘いあまいお声を上げて。

 そんな兄神様のかわいらしい様に、弟神様は笑まれました。
 それは、先刻、村の者どもに見せた優しいばかりの笑みとはまるで異なる、まるで滴るような、男らしい笑みでございました。

 鎧様が、蕾からそっとお指を抜き去りました。
 そして兄神様の腿の裏側に掌を当て、ゆっくりゆっくりと、弟神様に向けてお開きになりました。
 兄神様のかわいらしく震える雌蕊のようなそのおとこの器官も、大切な『白き種子』を蓄えた宝袋も、今まで鎧様のお指が埋まっていた蕾からとろとろとしたぬめりが溢れ流れ落ちる様も全て、弟神様はご覧になることが出来ました。


 兄神様には、右のお腕と左足のお膝から下がございませんでした。
 そして、それには訳がございました。






 かつて、兄弟神様は亡き母を慕い、黄泉の国の門を開きました。
 黄泉の国を統べる王は兄弟神様に全知をお与えになりましたが、その代わりだと言って弟神様を闇に捕らえようとなさいました。



 闇の国は、死せるものの住まう国。



 兄神様は躊躇うことなく、その身を黄泉の王に差し出しました。
 弟神様を取り戻すために、この命を取ってもかまわないと、兄神様は黄泉の王に言われました。

 黄泉の王は兄神様から腕と足をお取りになりました。
 血塗れになりながらも兄神様は、取り戻した弟神様に無事でよかったと微笑まれました。
 弟神様を想う、兄神様のその深いふかい優しさに、弟神様は強く心打たれました。
 弟神様は、兄神様を抱き上げ連れ帰られました。

 兄神様は、弟神様を深く愛しておられました。
 弟神様もまた、兄神様を深くふかく愛されました。宝物のように大切に大切になさいました。


 兄弟神様は、御互いをとてもとても、それはもう、深く愛しておいででした。
 腕を足を欠いたお体でありながらも、兄神様はとてもとても幸せであらせられました。
 腕を足を欠いても、兄神様の崇高な美しさが翳ることはございませんでした。


 弟神様は、兄神様にとこしえをお誓いになられました。兄神様も、それをお受けになりました。
 黄泉を抜けて辿り着いたその美しい森で、兄弟神様は幸せに幸せにお暮らしになられました。







 大きく割り開かれた兄神様の股座に、弟神様が顔をお埋めになりました。
 震える雌蕊の先端にかるく接吻をされてから、兄神様の愛くるしい宝袋をくちびるでやさしく食まれました。
 宝袋に収められた双子の珠をひとつ、弟神様が御口にお納めになりました。
 御口に含み、細かい襞を舌先で伸ばすように嘗め、転がして、丁寧にていねいにお可愛がりになりました。いったん御口から出しては珠を包む柔らかな皮を吸い、雌蕊へと続く薄く細く張り詰めた皮膚をちろちろと嘗め上げ、また含み。
 それを右、左と何度も何度も繰り返されました。兄神様の紅い唇からは、すすり泣くような甘いお声がいくつもいくつも漏れました。
 弟神様は、うっとりと、満足そうにお笑いになりました。

 兄神様の唇を、鎧様の皮の指先がゆるりとお撫でになりました。兄神様は舌を出して、そのお指をぴちゃぴちゃとお舐めになりました。
 ぴちゃぴちゃと舐めてちゅくちゅくと吸っておられました。泣きそうに眉をお寄せになって、それはもう懸命に、鎧様のお指をしゃぶっておいででした。
 鎧様のもう片方の掌に御肌を撫でられきれいなお色の乳首を可愛がられ、生身の弟神様に宝袋を舐り可愛がられながら、懸命に、鎧様のお指をしゃぶっておいででした。



 豊穣の祭りに欠くことのできない大切な白き種子が零れてしまわぬようにと、兄神様の宝袋と雌蕊の根元は、色とりどりの組み紐で結わえられておりました。

 兄神様はその戒めを解いて欲しいとお泣きになりました。弟神様は兄神様の頬をやさしく撫でて差し上げましたが、祭りの日まで紐を解くことは出来ないと仰せられました。

 もどかしげに苦しげに、兄神様が首をゆるゆるとお振りになりました。弟神様は兄神様の雌蕊の先端からこぼれる透明な雫を吸い上げて差し上げました。一際甘いお声を上げて、兄神様の腰が大きく揺れました。たっぷりと吸われ可愛がられて紅く腫れた宝袋と華やかな組み紐が、露に濡れてゆらゆらと揺れて、それは大層美しゅうございました。

 弟神様は下衣を緩めると、逞しく漲った雄刀を取り出されました。
 取り出した雄刀を兄神様のお口元に差し出されますと、兄神様は鎧様のお指になさったようにして雄刀をちゅくちゅくとお吸いになられました。
 雄刀全体をちろちろと嘗め上げ、御口を大きくお開けになって口内にお招きになりました。うっとりとしたお顔で深くまで飲み込み、唇を窄めぎりぎりまで引き抜いて。可愛らしい御口元からは、じゅぷじゅぷとお恥ずかしい音が漏れました。

 んくんくとほおばり肌を染める兄神様の、綻んで物足りなそうに収縮を繰り返しておられた奥の蕾にはまた、鎧様がお指を差し込んで差し上げました。
 弟神様が雄刀でして差し上げるように、鎧様は内に差し込まれた太いお指を深く抜き差しなさいました。

 兄神様が、雄刀にふさがれた御口から、くぐもった甘い悲鳴をお上げになりました。組み紐で結わえられた雌蕊が、白いお腹を擦るのではないかというくらいに反り返って震えました。

 その様が可愛くて堪らないと弟神様が仰りました。
 弟神様は兄神様のお美しい髪にお指をくぐらせ頭を支えて差し上げると、兄神様の御口の中をその逞しい雄刀で擦りあげられました。


 御口から蕾から身体の内側をいっぱいに満たされて兄神様の全身は桜色に染まり、花のような甘い香りが立ち昇りました。
 花のように甘く、とてもとても官能的な香りでございました。


 その香りを胸いっぱいに吸い込まれ、弟神様は兄神様の御口の中に勢い良く精をお放ちになられました。飲み込みきれなかった白い濁りが、兄神様の御口から溢れ流れ出しました。

 弟神様は微笑まれると、頂を極めることが叶わずにすすり泣く兄神様を優しくやさしく抱きしめられました。
 愛おしいと顔中に接吻をなさいながら、兄神様を優しくやさしく抱きしめて差し上げるのでした。



 お社の外はすっかり暗くなり、天からは銀色をした雨が重く冷たい帳を下ろしておりました。









 さて、お祭りの日が参りました。
 その日は大層良いお天気で、村の者たちも皆、心弾んでおりました。




 榊の飾られた酒器を傾け、兄弟神様はお酒をお召し上がりになられました。
 弟神様はまるで水を飲むかのごとくに杯を干されましたが、あまりお酒のお強くない兄神様は三口ほど御口をつけただけで頬を染め、とろとろ微笑んでおられました。


 酔ってクスクスとお笑いになられている兄神様を抱き上げると、弟神様は鎮守の森にお入りになりました。
 鬱蒼とした森の中程、泉の周りはそこだけ森が切り取られ、青い青いお空を見上げることが出来ました。

 秋の高い陽射しが良く当たる場所に、色とりどりの美しい花が咲き乱れておりました。
 まるで敷き詰めたようなそれは、さながら花の褥のようで御座いました。

 弟神様は、兄神様を花の褥の上に降ろし横たえました。一糸纏わぬお姿になられ、抱き合い、接吻を交わされました。
 弟神様の熱い雄刀が兄神様の蕾を散らし、その柔らかな花鞘の中に深く埋め込まれてゆきました。まるでめおとのように深くふかく繋がり合われておりました。兄神様が片方しかないお腕で、弟神様にしがみ付かれました。そのお顔は大層幸せそうで御座いました。


 弟神様は一旦雄刀を引き抜かれると、褥の上に座して兄神様を背中から抱きしめ、また深く勢い良く貫かれました。そして情熱的に突き上げながら、兄神様を戒めていた組み紐を解いて差し上げました。



 ようやく味わうことの許された絶頂。
 兄神様は瞬く間に上り詰め、細く悲鳴をお上げになりながら‘白き種子’を勢い良くお蒔きになられました。終わらない放埓の快感に、白い背をお体をびくびくと痙攣させておられました。
 それに合わせ花鞘の中がうねる様に弟神様の雄刀に絡み、絞り上げられました。弟神様も、兄神様の中に精をたっぷりと放出されました。

 白き種子は飛び散って、花々を濡らしました。大地を濡らしました。
 兄神様の雌蕊が力を失い項垂れて、それでも放埓は止まず、狭いところを種子の通り抜ける快感に、兄神様のお体は痙攣を続けておられました。搾り出すように、弟神様が兄神様の宝袋を揉みしだかれました。
 紅い唇を戦慄かせ甘いお声を零しながら、兄神様は弟神様のお腕に抱かれ崩れ落ちました。


 雄刀を抜き出し蕾を御指でお拡げになられますと、兄神様の花鞘の中からとろとろと、弟神様の精が溢れ零れだしました。

 兄弟神様の精は互いに交じり合い、地中に吸い込まれてゆきました。



 するとなんとも驚くべきことに。


 花が草木が、一際鮮やかに彩られました。
 彩りは輝きは森を覆い、村全体に広がって参りました。
 刈入を待ちわびた稲穂は黄金に輝き、深く頭をたれました。



 村の其処此処から、人々の喜びの声が上がりました。笛の音が響き、太鼓が打ち鳴らされました。

 祭りが、始まりました。



 兄弟神様は澄み渡った泉の水で、御身を清められました。
 兄神様は緋色の衣に身を包み、弟様に背を抱かれ、用意された輿にお乗りになりました。


 兄弟神様を乗せた輿は鎮守の森を抜けお社を抜け、村中を練り歩きました。
 美しい花冠をお被りになられた兄弟神様を乗せて、輿は村中を練り歩いたので御座いました。



 村の者たちは皆、その豊かな実りをもたらして下さった、ありがたい兄弟神様をその宝袋を讃え敬い、奉りました。
 村中が喜びに沸き、歌い踊り、兄弟神様の深く互いを思いあう美しい兄弟愛をこの豊かな実りをもたらす宝袋を讃え敬い、歌い奉りました。







 この小さなのどかな村で、人々は幸せに暮らしました。
 この小さなのどかな村で、兄弟神様は大層幸せにお暮らしになられました。




 これは昔の物語。
 神様がまだ人と共に暮らした時代の物語。


 神様がまだ・・・・・・人々を愛し、この地上で幸せに暮らした時代のお話。










END


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