『四つ目の禁忌の夜』
罪を重ねるたび、その言葉は重さを失っていった。
「駄目だ、こんなことしちゃ駄目だ。お前は、こんなことしちゃ・・・・・・」
罪を犯すのは自分ひとりで充分だと、泣いて、僕の身体の下で身をよじる。
その未発達な身体を組み敷いて縫いとめて拒絶の言葉をつむぐ唇を塞いで。
あなたはかわりにその指でしがみついて何もかも曝して、愛の言葉をささやいて。
あなただけが僕のすべてだから。
だから、一人で背負い込もうとしないで。
「兄さん――――抵抗しないで」
一つ目の禁忌は、母さんを練成しようとしたこと。
二つ目は、僕の魂をこの世に繋ぎとめたこと。
そして昨夜、僕らは三度目の禁忌を犯し、僕は生身の肉体を取り戻した。
人体練成成功と言う大業そのものの達成感なんて、僕らには何の価値もなかった。ただ、『失ったもの』をとり戻す、そのための手段でしかなかった。
禁忌なのは判っていた。
でも、それしか方法は無かった。
――――なのにどうして自分独りの罪だと思うの?
取り戻した身体を喜び合って、お互いを抱きしめて生きていることを実感して。体温を感じて、陽にさらされ少し埃っぽい兄さんの髪の香りを胸いっぱいに吸い込んで。
身体が熱くなった。触覚として感じる兄さんの肌が掌に甘く融けてもっと触れたくて、疲れて寝入ってしまったあなたの顔をまるでお預けを食らった犬みたいにただ、眺めていたよ。もっともっと、兄さん、あなたが欲しくて。
あなたは僕のすべて。そして、僕の一部。
だからこそ、独りで罪を負うことなんて許さない。
すすり泣く声に甘い震えが混ざり始める。
僕が罪を犯すことを怖がって慄いていた兄さんの、その愛しい器官が切なく首をもたげる。指先で唇で舌先で、甘くやさしく吸い上げればそれははっきりと欲望の形を示した。
抵抗をやめていた兄さんの指先が、僕の背に食い込む。爪が皮膚を破る痛みに酔いしれながら、赤く腫れた唇を舌でなぞる。
「んくっ・・・・・・ぁ・・・ふっ・・・」
溺れて、僕なしではいられなくなって。
目的の旅を終えても僕から離れていかないで。
たった独りですべてを背負って、僕をきれいなものにしないで。
あなたがその血で僕をこの世に縫いとめたように、この身体であなたを僕に縛りつけよう。所有の印を幾つも、その身体に紅く刻んで。
「力、抜いて。兄さん、僕の名前呼んで」
ゆっくりと時間をかけて解したそこに、僕は欲望を突きつける。
「・・・・・・ア・・・ル・・・・・・っ」
何が行われるのか、理解した兄さんが目を瞠る。涙を零す。
「そうだよ、兄さん。あなたを抱いているのは、僕だ」
「や、め・・・・・・」
「可愛い兄さん、止めてなんかあげない。嫌がってもだめ、あなたはもう僕のものだよ」
じわじわと、甘い熱い肉を開いてゆく。完全にひとつになる。
血を分けた実の兄のあなたと身体を繋げる、これが四つ目の禁忌。犯したのは僕。
「離してなんかあげない――絶対に」
そして僕は・・・・・・兄さんの中を僕の罪で穢した――――。
END