僕は全部知っているんだよ、と、彼が哂った。
見覚えのある金の瞳。彼の兄と同じ、純金を溶かして閉じ込めたような金色の瞳。
その液体のような金がザワリと動く瞳孔が大きく広がる獲物を狙う肉食の獣の目。
「子供・・・・・・の、くせに・・・っ」
悪態をついて睨みつけても、その子供に組み敷かれている有様ではなんの威厳も迫力もありはしないねと、口の端を吊り上げて彼が笑う。
「ねぇ、でも、僕は知ってるんだよ、大佐。貴方が・・・・・・男に抱かれるのが好きな人なんだって・・・そうでしょう?」
素直になればいいのに、と、指先がワイシャツのボタンを外してゆく。はだけられた胸元、鎖骨にくっきりと痕が付くほどキツく、歯を立てられる。
与えられた痛みに・・・・・・その快楽に餓えていた身体はあっけなく陥落してゆく。
「やっぱり・・・・・・。痛いの、好き、なんでしょう?酷くされると、感じちゃうんでしょう?」
素直になっちゃいなよ、と、凝った乳首を噛み千切るように、強く。
「あ・・・・・・ぁ・・・っ。はぁ・・・・・・・・・あ・・・・・・や、め・・・・・・」
自分の半分の歳の子供にこんなことされて感じて、恥ずかしくないのと、彼が嗤って、罵られて痺れて。
「知っているよ。貴方が本当は・・・・・・贖罪を求めていること」
・・・・・・・あぁ、そうだ・・・・・・・・・この、罪を・・・・・・・・・・・・・。
罪の無いただ肌の色のちがう多くの人々の命を奪ったこの両手を踏みにじって。
人を殺し英雄に仕立てられた愚かな男に罵詈雑言を浴びせかけて口汚く罵って。
この国の頂上を目指しながらその実、心の奥底でいつもいつも断罪を望んでいる。
「なのに貴方はやさしい人ばかりを好きになるんだね。あなたを愛してくれない人ばかりに惹かれるんだね」
ああその通りだ。愚かしいと自分でも思うさ。
惜しみない友情を注いでくれた親友に。ぶっきらぼうに笑いながらも信頼を寄せ付いてきてくれる部下に。猛る熱でこの身を貫いて欲しいと叶うことのない愚かしく汚らわしい欲望を胸の奥に抱いて。
・・・・・・・・・罰して。彼らを穢してしまう欲深い私を罰して。血で汚れた手でそれでも争いの無い世界が欲しいと手を伸ばし続ける愚か者を罰して。
「貴方の安らぎは断罪の先にしかないのに、それでもやさしい人ばかりに惹かれるんだね」
ひたかくしにしてきた心の底に閉じ込めてきた誰にも打ち明けることの出来ない本当の望みを次々と暴かれて羞恥に震えながらも、裁きに似たその言葉に安堵している己を知る。
「自分を好きになってくれない人を好きになって想いを打ち明けることも出来ないで澄ました顔で体裁を取り繕って。・・・・・・本当は抱いて欲しくて犯して欲しくて涎を垂らしている淫乱な雌犬なのにね」
罵られて勃起した性器を彼の膝が踏み躙って待ち望んだ強烈な快感に登り詰める。
「ぅ・・・・・・・・・くっ・・・」
荒く息をついて射精感を堪えて断罪をその先にある解放を待ちわびてねだるように彼の金の瞳を見上げて。
彼の掌が私の頬をパン・・・とひとつ張って甘くひりつく快感に堪えきれず果てて。
軍服の青いズボンが濡れて濃い染みを作る醜態を彼の眼に晒して。
腫れて疼く頬を同じ掌が優しく撫で擦る。
「罰してあげるよ、ロイ・マスタング。罪深い貴方を罰して・・・・・・そして赦してあげる。だから貴方は安心して上を目指していいんだ」
心はあげられないけどね、と彼が笑って私たちは契約を交わす。
叩かれて罰せられて・・・・・・・・・安堵の息を深く、吐いた。
「大佐!どうしたんですか!?」
慌てたような子供の声が耳に飛び込んできたのでそっと目を開ける。
目の前には大きな鎧。いつもどおりの彼の姿。
ああ、夢を・・・・・・見ていたのか。
「・・・・・・おはよう、アルフォンス・エルリック」
無表情なはずの鎧の面が目を瞠ったのが判った。
「おはようって!!寝てたんですかそんな床の上で!?倒れてるのかと思ったじゃないですか!あぁもう信じられない!兄さんと言いだらしの無い!!お腹出してないだけ兄さんよりましか?でも30歳にもなってお腹出してたらもう手の施しようも無いし!まったく変なところ兄さんとそっくりですよね!!」
バラバラと降り注ぐお小言の数々に、ああ鋼のはいつもこうなのかと暢気に思いながら。
「何嬉しそうな顔してるんですかあぁもう訳判らない」
「・・・・・・ちょっと楽しい」
馬鹿言ってないで具合が悪いんじゃないならさっさと起きてと引き上げられる。
大きな手が、二の腕を掴んで。
その手で・・・・・・握りつぶして。
私を罰して・・・・・・・。
ブラウザを閉じてお戻りください